ポーランド戦での西野監督の判断に期待値はあったのか?
ロシアワールドカップで、日本がポーランド戦で途中から試合を放棄したことについて物議を醸している。
ってことで、今回はそれについての個人的な意見を書いてみる。
グループHの勝敗表と最終戦の要約
4チーム中2チームが勝ち抜けとなるグループHでは、最終的にコロンビアと日本が勝ち抜けして決勝トーナメントへと進出することになった。
1位は勝ち点6のコロンビア、一方の2位は日本とセネガルが勝ち点・得失点差・総得点数で並んだが、イエローカードの数が日本が4枚だったのに対してセネガルが6枚だったので、警告のポイントで日本がセネガルを上回り2位になったということだった。
ちなみに、グループリーグ順位の決定方法は以下の通り。
・勝ち点
・得失点差
・総得点数
・同点チーム同士の試合の勝ち点
・同点チーム同士の試合の得失点差
・同点チーム同士の総得点
・警告のポイント(フェアプレーポイント、反則ポイント)
・抽選
【警告ポイントの算出方法】
・1イエローカード:マイナス1ポイント
・イエローカード2枚でのレッドカード:マイナス3ポイント
・1発退場のレッドカード:マイナス4ポイント
・イエロー&1発退場レッドカード:マイナス5ポイント
1~2戦を終えて勝ち点と総得点でセネガルと並んでいた日本は、ポーランド戦で引き分け以上なら決勝トーナメントに進出確定だったのだが、もし負けたとしても以下の条件のいずれかに該当すれば決勝トーナメントへ進出となっていた。
・セネガルがコロンビアに勝つ
・コロンビアがセネガルに勝ち、なおかつ日本がセネガルに得失点差で上回る
つまり、日本がポーランド戦で負けたとしても、コロンビアとセネガルが引き分けなければ決勝トーナメントに進出する可能性があったということである。
で、結果としてポーランドにゴールを決められる。
ゴールが決まったのは後半14分。
この時点で、同時に試合が行われていたコロンビアとセネガルの試合は引き分けの状態だったので、このまま試合を終えると日本のグループリーグ敗退が決まるという状況だった。
しかし、その後
コロンビアがゴール
時間は後半74分。
その日の、日本対ポーランド戦とコロンビア対セネガル戦は同じ時間にキックオフしていたので、日本側の試合においてもおおよそ後半74分の時点でコロンビアがセネガルを1点リードしたわけである。
そして、そのまま試合が終われば、日本は決勝トーナメントを2位通過となるわけだが、ここで日本が取った行動は
試合放棄
後半74分過ぎから終了までの約20分間、ひたすら自陣でボールを回して時間を潰し、1点負けで試合を終了するという戦略を取ったわけである。
一方のポーランドも最終戦を勝ちで終えられるという利点があるので、日本の戦略に乗る形でボールを奪いには行くことはなく、そのまま試合終了となった。
ポーランド戦で試合を放棄したのは正しかったのか?
日本が後半74分過ぎから試合を放棄したことに関して、多くのメディアやファンが物議を醸しているが、私の見解としては決勝トーナメントに進出するための最善の策として「試合放棄」が正しかったか否かを正確に判断する必要があると思っている。
つまり、西野監督の判断に期待値はあったのか?
ということである。
コロンビアがセネガルをリードしたのは74分だったので、残りの試合時間はロスタイムを含めて約20分となる。
そして、その20分の間にセネガルがゴールを決めてコロンビアに追いつく可能性はどのくらいのものだったのだろうか?
これは算出するのは非常に難しいが、セネガルの総得点数は4点であるので、1試合あたり1.33点決めていることになる。
そして、1試合はロスタイム含めて約100分なので1分あたり0.013点。
つまり、20分間で0.26点決める可能性があるということである。
そして、0.26点ということは1点の26%となるので、セネガルは残りの20分間で1点を入れる可能性は26%あったということになる。
しかし、その一方でコロンビアも追加で点数を決める可能性があり、先程のセネガルと同じ計算式で算出してみると、コロンビアがゴールを決める可能性は33%。
つまり、コロンビアがリードした時点でそのまま1点リードで終わる可能性が最も高かったというわけなのである。
一方の、日本とポーランドにおいても算出してみる、残り20分でゴールを決める可能性は
日本⇒26%
ポーランド⇒13%
となった。
そして、以上のような条件となった場合、残り20分で試合を放棄したことに期待値はあったのか?なかったのか?ということを調べてみよう。
【残り20分でゴールを決める可能性】
①セネガル⇒1/3.84
②コロンビア⇒1/3.03
③日本⇒1/3.84
④ポーランド⇒1/7.69
つまり、①と④が残り20分で起こってほしくないことであり、それに対して②と③は起こってほしいこととなる。
こうなった時に、試合放棄することによって③と④を失ったわけであるが、データ的にポーランドが得点する可能性よりも日本が得点する可能性の方が高かったので、試合を放棄したということは結果として期待値マイナスの行動をとってしまったと言えなくもない。
データ以外の要素
しかしながら以下に挙げたように、データ以外の重要な要素も多数存在しており、むしろそちらの要素のほうが大きいといえる。
その日の日本は大幅にメンバーチェンジしており、今までの試合よりも明らかにパフォーマンスが悪かった。
その為、残り20分で攻めに転じたとしても、得点するよりも失点する可能性の方が高かったと思われる。
【ポイント2 警告を出されたくない】
警告のポイントで日本はセネガルを上回っていたので、下手に点を取りに行ってカウンターをくらいファウルで止めるといった展開が起こることを避けたかった。
この場合は、ポイント1の要素が特に大きいように思う。
例えば相手がポーランドではなく、ベトナムだったらどうだろうか?
(ベトナムとワールドカップのグループリーグで対戦する可能性はゼロなのであくまで例え話)
格下のベトナムとの試合であれば、残り20分で失点される可能性はかなり低くなるので、攻めに転じていたと思う。
それによって点を決めれば、仮にセネガルが同点に追いついたとしても日本が決勝トーナメントへと進出となる。
以上のことを考えた時に、日本が攻めに転じなかったのは得点するよりも失点する可能性の方が高いと判断したからなんだと思う。
ただ、この辺の期待値計算ってすごく難しい。
攻めるべきか、または1点差で負けるべきか。
どちらを選択した方が、決勝トーナメントに進める期待値は高いのか?
文系の私は計算が苦手なので、ぶっちゃけ誰かに計算していただきたいw
勧善懲悪主義の日本人
特に日本では「正々堂々と戦う」みたいな美学があるんで、今回の日本代表の戦い方を毛嫌いする人も多かったのではと思う。
ただし、私の見解では「勝負事にはある目的が存在していて、それを目指す過程が面白い」ものだと思っている。
そうなった時に、今回のポーランド戦における日本の目的は決勝トーナメントへの進出であるので、それを目指す過程が面白いわけである。
そして、決勝トーナメント進出の為には、
・勝利を目指すべきか
・引き分けを目指すべきか
・1点差負けを目指すべきか
ということが、コロンビア対セネガル戦の状況に応じて変わるわけであり、そこの心理戦や駆け引きというものが私にはすごく面白かった。
逆にそのへんのことを何も考えずに、単に目の前の試合を勝ちに行くという戦い方は正々堂々たるものかもしれないが、勝負事の世界では低レベルな話だ。
だから、残り20分の日本の試合運びに関しては否定しないし、むしろよくぞやってくれたと思っている。
逆に、今回の日本の戦い方を否定する奴らは間違いなくスポーツを分かっていないくだらねえ奴らだと思っている。
勝利よりも大切な決勝トーナメントに進むという目的を達成する為の、究極の頭脳戦にケチをつける奴は、きっとビジネスでも失敗する負け組の人間に違いない。
ちなみに、ID(データ)野球のノムさん。
2007年日本シリーズで完全試合目前で山井から岩瀬に継投した落合博満。
この二人の名将の意見を聞きたいね。
あの西野監督の判断をこの二人はどう考えているのだろうか。
一皮むけた日本代表
日本サッカーに足りないものは「マリーシア(ずる賢さ)」なんてよく言われるけど、今回の出来事でそれを払拭できたんじゃないかな。
あの場面で試合放棄した「決勝トーナメントに進むためのマリーシア(ずる賢さ)」こそが日本代表に最も必要な要素であったのではないだろうか。
セネガルからしてみたら非情といえるかもしれないが、こういう非情な戦い方ができるようになった日本代表はやはり一皮むけたと思うし、それこそが最も求められていたことだと思う。
その辺のことを何も考えずに「正々堂々と戦うべき」という正論をほざく奴らは、まさに便所のネズミのクソにも匹敵するくだらない物の考え方をしているといえるだろう。
「1失点で試合を終えようとした西野監督の判断は、決勝トーナメントに残る為の選択としては正しくなかった」と否定するのであればいいのだが「正々堂々としてない」とか「見苦しい」とかそういった類の理由で否定する奴らは本当にどうしようもねえ奴らだなって思う。