ギャンブル依存症問題はパチンコ業界ではなく政府の責任
宝くじの売上が年々減少している。
ピークは2005年の売上高1兆1047億円だったのだが、2017年は7866億円にとどまり、実に29%の売上減となってしまっている。
一体なぜここまで宝くじの売上が落ち込んでしまったのか、それは一言でいうと「国民が賢くなったから」ということに他ならない。
宝くじの売上金額の振り分け
引用:宝くじの公式サイト
ご覧のように宝くじにおいては、全体の約47%しか当選者に還元されない。
つまり、10,000円分買ったとしたら理論上4,700円しか戻ってこない。
こんな割に合わないギャンブルは世界中どこを探しても見当たらない。
にも関わらず、未だに年間約8,000億円も売り上げられているので日本国民がいかにギャンブルにおけるリテラシーが低いのかということが、この売上を見るだけで理解できる。
ちなみに、パチンコ業界での売上高においては表と同じ平成28年では約20兆円となっており、宝くじの25倍の規模となっている。
しかしながら、パチンコ業界に携わっている関係者の規模を考えた時に、この業界の売上高が宝くじの25倍ごときというのは極めて不自然。
・・というより、宝くじという1ジャンルがパチンコ業界の総売上高の4%の規模にあるというのを見て、本当に儲かっているんだなと驚きを隠せないばかりだ。
そして先に述べたように、これほど不利なギャンブルがこれだけの規模で存在しているということは、この日本国民がいかにギャンブルのリテラシーが低いのかということを物語っている。
おそらく、ギャンブル大国のイギリスを始めとしたヨーロッパ諸国に日本の宝くじが存在したら、全く買う人は存在しないのではないかと思われる。
しかしながら、ここにきて宝くじの売上が減少しているということは、日本国民がようやく「宝くじというギャンブルがいかに馬鹿げたものか」ということを理解してきているからだと思われる。
パチンコ業界における昨今の問題
それと同様に、パチンコ業界においてもユーザーの減少により年々売上高が下がってきているわけだが、私が特に危惧するのが年々ユーザーのレベルが上がってきているという点である。
これが一昔前であれば、客の95%は単純な運の勝負だけでパチンコスロットを楽しむ層であり、雑誌やネットで知識を付けて攻略して勝つという人は5%くらいしか存在しなかった。
しかし、それが現在では30~40%くらいはパチンコやスロットの仕組みを分かっている層で、正攻法で勝ちにきているユーザーであることと思われる(あくまで体感だが)。
だからこそ、そういった層を相手に利益を上げていくことは難しく、単純に「ユーザーも減っている」し「客層のレベルも上がっている」というダブルパンチを食らっているのが業界の現状なのである。
そして、こうして見ると「宝くじの売上が減少している現象」と「パチンコ業界の売上が減少している現象」は実によく似ている。
つまり、いずれのケースにおいても国民が賢くなったからこそ売上が減少しているということなのである。
・・となった時に、以下のような人物はパチンコ業界の救世主という他ない。
いずれも全国パチンコ店ポータルサイトであるみんパチにおける投稿だが、このような投稿は全体の6~7割は存在しており、現状のパチンコ業界はこれらの人物に支えられていると言って過言ではない。
実際に、上記の輩共はみんパチに投稿する内容としては大バッシングを受けているわけだが、ことさらパチンコユーザーとして考えた時に、ホールにとっては大変な優良客ということになる。
例えば、みんパチの読者ランキング1位である123さんなどに客として来店されてはホール側もたまったものではない。
イベント日には、すべての高設定台をかっさらう被害に遭うこと間違いなしといった形で、利益面ではマイナス以外の何者でもない顧客である。
それだけに、上記のオカルターや遠隔信者こそがホールにとって最高の優良顧客となる。
このような顧客を囲えることができたら営業は安泰である。
黙ってても牙狼やジャグラーの期待値マイナスの台に金をぶち込んでくれるわけだから、これほど良いお得意様は他に存在しない。
・・しかしながら、昨今の情報化社会の発達により上記のようなオカルターが絶滅危惧種に瀕しているということなのである。
もちろん、現状においても全体ユーザーの過半数を占めていると推測されるが、それでもパチンコ店を営業していく為には絶対数がもっともっと必要なのである。
つまりは、パチンコ業界を救うのがオカルターというわけなのである。
ギャンブル依存症大国の日本
昨今の情報化社会の影響により「馬鹿らしくて宝くじを買う層が減っているという現状」そして「パチンコスロットの仕組みを理解するガチ勢が増えているという現状」それらの要素により、宝くじやパチンコといったギャンブルの売上が年々右肩下がりになっているわけだが、政府としては依然としてギャンブル依存症患者をなくす為の取り組みに躍起になっている。
もちろん、IR法案を通して日本にカジノを建設する以前の問題として、国としてギャンブル依存症患者をなくす為の取り組みを行うことは最もである。
実際に2017年の調査では日本人の約320万人(3.6%)がギャンブル依存症患者と言われており、各国と比較してみた時にその割合は抜きん出て高い。
・日本 5.6%
・オーストラリア 2.1%
・マカオ 1.8%
・スペイン 1.7%
・アメリカ 1.4%
・イギリス 0.8%
この数値の高さをどうにかしろってことで、パチンコ業界が政府からやり玉にあげられているわけであるが、これだけギャンブル依存症患者が多い理由はパチンコ業界だけの問題なのだろうか?
お金のリテラシーが低い日本人
興味深いデータとして、ギャンブル大国イギリスでは依存症患者の割合が0.8%とかなり低い数値となっている。
イギリス人がギャンブル好きであることは有名で、競馬・サッカー・政治・芸能といった全ての分野においての賭け事が、イギリス国内の至る飲み屋で開催されている。
ヨーロッパでは日本のように賭博罪なるものが存在しないので、バーやパブにおいては常に何らかの賭け事が行われているが、人々は自分の小遣いの範囲内でそれを楽しんでおり、先の数値にもあるように賭け事で身を滅ぼすような人の割合は日本よりも圧倒的に少ない。
つまり、賭博罪が存在しない海外よりも、賭博罪が存在している日本の方がギャンブル依存症が多いという矛盾した状態になっているというわけなのである。
なぜこのようなことが起こるのかと考えた時に、賭博がOKとなっている国であるからこそ国民の賭博に対する意識が高いということが推測される。
つまり、ギャンブルが容認されている国で生きていく為には、ギャンブルの本質というものをしっかりと勉強しておかないと将来身を滅ぼす危険があるので、幼少の頃からギャンブルを始めとするお金に対する考え方というものをしっかりと教育されているということなのである。
しかし、日本ではどうだろうか?
賭博罪の存在によりギャンブルそもそもが禁止になっているわけなので、ギャンブルについて語ることさえもタブーとされている。
私は以前、自分の子供が成長したらパチンコや競馬に連れて行って、ギャンブルの本質というものを教育しようと思っていたのだが、そんなことを書いたら「とんでもない父親だ!」なんてバッシングしてきた読者も存在したほどだ。
だが、それこそが最も危険な考え方であって、ギャンブルの本質が分からないまま大人になり、友人とふらっと足を踏み入れたパチンコ店の北斗無双でたまたま20連かましてしまった結果としてギャンブル依存症になり最終的に身を滅ぼす・・といった事態が全国各地で起こっているわけなのである。
もしそこでギャンブルやパチンコの仕組みそのものをしっかりと理解していれば、一時的に勝つことはあっても最終的にどうなるのかということが分かっているので、ギャンブルにのめり込んで身を滅ぼすという可能性は低くなる。
しかし、そのような教育がまったくされない日本人においては、その時の判断は個人に委ねられるということになる。
その時に「今回はたまたま勝てたがギャンブルの本質上、最終的には胴元が勝つようにできているので普通に打っているだけでは最終的に必ず負ける」と考える人がいれば「俺ってギャンブルの才能あるかも!?」と勘違いする人も出てくる。
このような現状であるからこそ、日本はギャンブル依存症大国となっているのである。
賭博罪を廃止した上でギャンブルの教育を推奨せよ
偶然の勝負に関し,博戯または賭け事によって財物の得喪を決める行為をする罪 (刑法 185) 。国民一般の健全な経済観念,勤労意欲を保護するための立法である。勝負が技術の優劣によることが大きい場合でも偶然の要素があれば (賭け碁など) ,やはり罪になる。もっとも,一時の娯楽にするため,その場での飲食物を賭けるなどしても賭博罪にはならない。常習として博戯または賭け事をした者は常習賭博罪として刑が加重される。
引用:コトバンク
つまり、ギャンブル依存症が抜きん出て高い原因の諸悪の根源は賭博罪であるといえる。
国内においてギャンブルが禁止されているからこそ、それを学ぶ機会も存在せずギャンブルに対しての免疫性が著しく低い。
それによって、ギャンブルだけでなくお金に対するリテラシーも著しく低いというのが日本人の特色であるといえよう。
似たようなことで、それは性教育においても一緒である。
日本の性教育においてはヨーロッパ諸国に比べて内容が極めて薄く、つまりはセックスに対する知識がしっかりと教育されていないということである。
特に女性におけるセックスに対するリテラシーに関しては、ヨーロッパ諸国の女性と日本の女性では雲泥の差が存在しており、それは巣鴨あたりのいかがわしい店にいけば白人女性の性に対するリテラシーの高さに驚愕するばかりだ。
例えば、避妊具の着用率であったり、HIVに対する知識や検査における意識の高さなどにおいては、日本人カップルと西欧のカップルとでは大きな差が存在しているということもよく聞かれることである。
タブー視した瞬間、思考は停止する
日本人がギャンブルやセックスに対してリテラシーが低い原因は、それに関する教育がしっかりとなされていないからである。
そして、なぜ教育がなされていないかというと、ギャンブルやセックスをタブー視しているからである。
何かをタブー視した瞬間、それは存在しない(もしくは触れてはいけない)ものとなるので、それについて討論したり教育したりといったことがいけないことのように思われる社会の風潮が存在するようになる。
しかし、その一方でギャンブルとセックスは生きていく上で大きく関わるものだから、しっかりと知識を付けて臨まなければならない。
でも、それに対する認識が甘いのでギャンブルやセックスにおいては常に様々な社会問題が発生しているというわけなのだ。
まあ、そもそも国は賭博罪でギャンブルを禁止する一方で、国民には思いっきりギャンブルを推奨している。
例えば賭博罪においては
「国民一般の健全な経済観念,勤労意欲を保護するための立法」
と位置づけられており、つまりは
「健全なる勤労に励んでいる国民の射幸心を煽ってギャンブルさせることはけしからん」
ということを言っているわけなのだが、
めちゃくちゃ射幸心を煽りまくっている
なぜにここまで射幸心を煽りまくっているのか?
その理由は、宝くじの売上の40%近くが販売元の都道府県等に分配される(つまり、税収になる)からである。
刑法185条で「健全なる勤労に励んでいる国民の射幸心を煽ってギャンブルさせることはけしからん」と言っているのにも関わらず、一方では、CMなどで煽りに煽りまくって宝くじを買わせるという矛盾した行為を行っているわけだ。
話は戻るが、ギャンブル依存症を減らすのであれば、賭博罪を廃止してギャンブルに対する教育をする他ない。
もしくは、賭博罪はそのままでもいいから、とにかくギャンブルに対する教育をすることが最も重要であるといえるだろう。
そういうことが大切なのに、2021年1月31日までに高射幸性機種を0%に撤去せよとか、パチンコスロットの一回あたりの大当り獲得出玉を現状の2/3にせよとか、全くもって的違いなことばかりしているのだからどうしようもない。